Bar GRANT
「過去も何も、俺が最初にあの女に会ったのは駅で眠る彼女を助けたときで、感謝こそされたって恨まれるはずはないんだ」
誰が聞いたって、俺は悪くないだろう。
出会ってすぐ恋に落ち、それからずっと誠実に接してきた。
どうすれば彼女が喜ぶか、そればかりを考えて暮らしてきた。
結婚は30歳になってからと決めていたが、年上の彼女のことを思い、2年前倒しでもいいかと思い始めていた頃だった。
そのために、必死になって働いた。
それなのに、あんな仕打ちを…―