ミモザの呼ぶ声
 たったそれだけのために。今のオレはあるんだ。
 ここに、在るんだよ。美優!
 オレは泣きながら美優の頬を描いた。やせ細ってしまったおまえの頬に、すこうし赤みを足して。唇には丹。少し覗いた小さな象牙色の前歯。死に化粧を施しているようで幾分、筆先が震えた。だが断じてデスマスクではない。美優は生きているのだから。
 瞳閉じて、ミモザの声を聞きながら、心を交わし、夢を見るような美優。けしてオレを見ない美優。だがそれでいい。オレは……オレは醜い。鬼なのだから……それでいい。
 それでいいんだ。
 美優。
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