<完> 冬桜よ、散りゆけ  –諦めるべき恋なの?–
 その日の帰り、桜は一人で帰っていた。

 いつも、友達と追いかけっこしながら帰っていた道。

 もう、遠い日となった。


――いつからなんだろうね。
   無邪気じゃなくなったのは。――

 ぼおっと空を見上げる。

 同級生や、卒業した仲良しの上級生、そして、海翔や美紫依や檀の顔が。

 雲がゆっくり過ぎていくように、桜の頭に浮かんでは、いつの間にか消えていく。


――みぃちゃん?――

 美紫依の顔が浮かんできた途端、桜の思考回路が急にショートする。

 前を見ると、美紫依が一人で歩いていた。

 とっさに足が軽くなる。

 足取りが軽くなる。

 走っているんだ・・・。


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