美男子症候群!?



めそめそしながら家に帰ると、玄関には久木先生のスニーカーがあった。



そうだ、家庭教師の日だったんだ。


でもどうしよ。


とてもじゃないけど、勉強なんてする気分になれないよ。




「あ、ハルちゃんお帰り。遅かったね……ハルちゃん?」




玄関のたたきで、ぼーっと突っ立っていたら。


リビングから久木先生が出て来て、あたしを見て目を見開いた。




「どうしたのハルちゃん。目が真っ赤だよ。なにかあった?」




優しい手が肩に触れる。


先生があたしの顔をのぞきこんできて、心配そうに眉を寄せる。



薄茶の瞳を間近で見た瞬間、涙腺が一気に崩壊した。




「ふ……えええええええ~んっ!!」




鞄をどさっと下に落として、棒立ちのまま泣いた。


涙と鼻水でぐちょぐちょになっても、どうでもよかった。




「は、ハルちゃん? どうしたの? どこか痛いの? それとも誰かにいじめられた?」




焦ったように言って、先生があたしの頭をなでる。



まるで小さな子どもにするみたいに。

< 296 / 329 >

この作品をシェア

pagetop