押しかけ×執事
悲しみに、暮れる。
 お母さんが亡くなった日から、あたしの周りの時間が全て止まってしまったかのような感覚に襲われる。

 とはいっても本当に時間が止まることはないから、お母さんが生きていたときと同じリズムで無情にも時間は過ぎて行く。

 お母さんの体は綺麗に死化粧をされ、自宅の近くの小さな集会所でお通夜。

 お金をかけずになるべくこじんまりとしたものにして欲しいという希望は、生前のお母さんの意思から。

 裕一さんがお母さんの意思を尊重してくれた。

 場所は質素だけど、お葬式の準備や運営は裕一さんが葬儀会社に頼んでくれていて、あたしは何もする必要がない。

 ……とはいっても、何か出来るような状況じゃなかった。

 ただただ、放心したようにお母さんの亡骸が入った棺桶のそばに座っていたあたし。

 きっと、そのときのあたしは「ただそこにいた」だけだと思う。

 独りぼっちになったことが、受け入れられなくて――……

 もう少ししたら、その目が開いて起きるんじゃないのかな?

 いつものように、あの明るくて優しい笑顔を見せてくれながら。

 そんなことを本気で思っていたように思う。

 ……そんな淡い願いは叶うことはなかったけれど。
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