あげは蝶


"いじめ"という言葉に
びくんと体が反応した。

なおしまは喋り続ける。


「そのいとこさ…みーちゃんっていうんだけど」

みっくんと似てるー!

ひとりで一瞬盛り上がった。


「あ…うん。それで?」

久々に思い出したみっくんに気をとられてしまった。


しまの話を真剣に聞かなくちゃ。

「……みーちゃん、中学の終わり頃から急にいじめられ始めてね……つい最近までいじめられててさ、今日帰ったらメール届いてて…。……っ」



しまは再び目に涙を浮かべはじめた。


いたたまれなくなって、思わず背中をさする。


「『もう疲れちゃった。ごめんね、しーちゃん。』って……。何のことだかわからなくて、変なメールを送ったことに関して謝ってるのかと思ったの……っ。」




「そしたら……っ。う…うぇぇえ…っ」


しまは嘔吐してしまった。

「だ…だいじょぶ?!病室…戻ろっ!後で看護師さんに片付けてもらうから……っ。ね?」

しまはぐったりとしたまま
こくんと頷いた。


「しま!大丈夫!?ささ…早く寝なさい!」


しまのお母さんは
ぼふぼふとベッドを叩いた。


「しま……
みーちゃんのこと…辛いの、わかるよ。
でも今は無理しちゃだめよ。
…だからって逃げちゃだめ。
闘わなくちゃいけないの。ママもそうしてきたのよ。
…まだまだ……立ち直れないと思うけれど…
一緒にがんばろう…?」



しまのお母さんは優しかった。

ただ泣きつづけるしまに対して何もいわずひたむきに。



「それから……あげはちゃん?だっけ。可愛い名前だねえ。
…しま、ひとりにしてあげてくれないかな?ちゃんと考えてもらわなくちゃいけないのよ。
今までのこと、これからのこと、諸々、ね。」


しまのお母さんは
ニコリと笑った。


あたしは微笑しかできなかった。
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