指切りげんまん
夕焼けが眩しい空に5回時計台の鐘が鳴った。西日が目を焼く。長い黒髪が風に遊ばれるけれど気にはならない。
オレンジ色のレンズを通して見たような風景。
目の前に建っている時計台の元には母の迎えを待っている子供達で賑わっていた。
何かをする訳ではなく、バイクに跨がり子供達を見ている私は不審者に見えるだろう。
誘拐、殺人…新聞やニュースを見ると必ず1日1度は目にする言葉。いつからこんなにも治安が悪くなったのであろうか、この世界は。

「また明日ね!」

「うん、約束、指切りげんまん」

「ばいばい」

子供達の無垢な笑顔と共に紡ぎ出される言葉。さよならの意味も知らない子供達が無邪気に笑い手を振っている。
束の間の平和を見た私はアクセルを叩きこむ。
少し冷え出した秋の夕方にはライダースでは身を切りそうだった。








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