たからもの
「そ、それじゃあっ……」

隆人の言葉を遮るようにして翼が言う。

「それじゃあ私の事も、その、つ、翼って呼んでください」

「うん。これから学級委員頑張ろうね、翼ちゃん」

もう何も思い残すことはない、というのはこの事かもしれないと思った。

会話が終わると同時に折笠が戻ってくる。まるでタイミングを計っていたようだった。翼はそれでも心臓が鳴りやまなかった。
しかし隆人は何事もなかったかのようにみんなの方を向く。

彼の横顔は凛々しかった。
思わず見とれてしまう。


だから今日香が微笑ましくこちらを見ている事に気付かなかった。
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