Memory


俺はこの日、初めて杏子にキスをした。

こんな気持ちになったのは初めてだった。

杏子の笑顔で安心する。
ずっと側に居てほしい。

人を愛しいって想うってのは
こんな感じなんだって初めて知った。

「‥宏揆?」
「バーカ。俺も杏子のこと大好きなんだぜ?」

顔を真っ赤にして驚く杏子。
そんな杏子を無視して
からかい半分で
今度は額にキスを落とした。

「あぁぁーー!‥宏揆のバカ!」

更に赤くなった杏子の顔は杏子が後ろを向いてしまったので
見えなくなってしまった。

少し‥いや。だいぶ残念だけど
俺はそのまま杏子のサラサラな髪を
クシャっと撫でた。

「不意打ちなんてズルイ‥」
「ごめんって」
「今までして来なかったのにー!」
「杏子があんな事、言うからじゃん」

その日は結局一日中、杏子の顔が赤かった。

そんで俺は潤の病気と向き合う事を新たに決意した。

それともう1つ。
俺の中での考えは間違えだったって事に気付かされた。

可愛い=(イコール)好き
では無かったと言うこと。

つまり、今まで菊池のことを可愛いって思ってただけで
本当に好きでは無かったって事。

一緒に居たいと思った人こそが
一般的に言う好きな人。

今なら自信持って言える
それが俺にとっては杏子なんだって。

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