EGOISTE
「……水月は知ってんのか?」
答えは分かってるはずなのに、俺は聞かずにはいられなかった。
「……知る筈ないじゃん。あたしだって気づかなかったぐらいだし」
「……水月に…」俺は腰を浮かせた。
まだ登校時間だ。あいつだってこの校舎のどこかにいる筈。
「やだ!!」
突然強い力で腕を引っ張られた。
油断していたのと、半分気持ちがどこかにいっていたのとで、俺はあっけなくベッドに逆戻り。
「やだって、どうするんだよ!」
「水月に……知られたくない…」
「知られたくないって、お前ら二人の問題だろうが!っていうか、あいつは何やってんだよ!!」
俺は思わず怒鳴っていた。
鬼頭の細い肩がびくりと揺れる。
鬼頭は……おびえていた。俺の言葉にじゃない、今目の前にぶらさがっている現実に、だ。
初めて見る。
こんな気弱になってる鬼頭を。
そう、気弱になっているのだ。