EGOISTE


俺はちょっとだけ目を開けた。


メガネのない視界で、車内の景色がぼんやりと滲んでいる。


何でかな?


その視界に歌南が入っている気がしたんだ。


でもあいつの姿は俺の視界にはなかった。





「さぁね」





俺はそっけなく言うと、目を閉じて体を外側に向けた。


今…歌南とちょっとでも顔を合わせたくないから。


ちっ。車内ってのは何でこんなに狭いんだよ。


俺は苛立ちながらも、ごそごそと脚を折り曲げた。


と、その拍子に、





ズキン!





急に酷い痛みが胃の辺りに走った。


あまりの痛みに声をあげそうになったが、唇を噛んで言葉を飲み込んだ。


ギリギリギリ……締め付けられるような痛みが断続して俺を襲う。


いってぇ。


胃の辺りを押さえて俺は背中を丸めた。



そこへ…



~♪


俺のケータイが着信音を鳴らしながら、着信を報せてくれた。













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