EGOISTE


俺も千夏も日本酒の好みは似ていた。


甘口よりも辛口。


その中でも北海道産のものが特にお気に入り。


国士無双は最初から知っていたわけじゃない。


千夏が好きだと言ったので、俺も飲んでみると旨かったというわけだ。




歌南は洋酒派でブランデーやウィスキー、ワインが好きだった。


付き合ってた当初は大人しくあいつに付き合っていたけど、正直ワインは俺の口に合わない。


まぁ好き嫌いはあるだけど、あの時の俺は随分無理をしていたわけだ。


だから千夏との付き合いはひどく楽だった。





もう終わったことだけど―――





「これ、おいしいね」


水月が猪口に入れた国士無双を飲んでにっこり笑った。


う~ん……


酒が酒だけに、こいつが言ってもどうもピンとこないんだけど……


意外と男らしいところがあるんだよな。


「水月、チョコ食べる~?」


鬼頭が持参してきたイチゴのチョコを水月に見せている。


「食べる~」


チョコをつまみにするってのは俺には理解できんが。


男らしいのか、女みたいなのか……


こいつは良くわかんね。







「国士無双かぁ。そう言えば最近全然麻雀やってないよね」


水月がボトルを見て少しだけ笑った。


ついでに言うと“国士無双”とは麻雀の役満貫の一つでもあるのだ。


「前ほどメンバーが集まらんだろ。大体俺はお前に勝てたためしがねぇからな。もうやりたくない」


「うっそ!神代先生麻雀できるの??」


楠が目をぱちぱちさせた。


「できるってなもんじゃないぞ?こいつぁ相当あくどい方法で上がるんだ」


俺は真剣な顔で楠の顔を覗き込んだ。


「へぇ意外」


鬼頭がくすっと笑う。


「あくどいって何だよ…」水月がむくれて唇を尖らせた。


「歌南の方がそう言う意味ではさっぱりしてるな。ていっても強いけど……」


って言って俺は口を噤んだ。






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