EGOISTE


う~ん…と頭を悩ましていると、じいちゃんは将棋盤を挟んだ向かい側でにやにや。


「まだまだ若いもんには負けんわい」


「歳の功ってか?随分余裕じゃん」


口の悪い俺の言葉にもじいちゃんは豪快に笑い飛ばす。


悪い人じゃないんだよなぁ。


俺が眉間に皺を寄せ、メガネをちょっと直すとじいちゃんの視線に気付いた。


「…何?」


「お前さん。良く見たら二枚目な顔立ちしとるなぁと思ってな」


じいちゃんは何を企んでるのかにんまりと笑った。


「俺はよく見なくても二枚目なの」


「どうだ?わしの孫の婿にならんか?」


はぁ!?


「冗談!俺ぁまだ25だぜ?じいちゃんに心配されるほど落ちぶれてないって」


「もう25か?適齢期じゃねぇか」


適齢期ってね…いつの時代を指してるのよ?


「わしの孫は自慢じゃないがなかなかの器量良しでなぁ」


俺の意見を無視してじいちゃんは話し出す。


はいはい。勝手に言っててくれ。


俺はその間考えさせてもらうぜ?


ベッドの上で胡坐をかき、将棋盤に視線を落としていると、トントンと病室をノックする音が聞こえた。


「噂をするとなんとやら、だ」


じいちゃんは嬉しそうに笑った。




「おじいちゃん?お見舞いに来たわよ?」




と上品な女の声が聞こえて、姿を現したのは……


なるほど、じいちゃんが言う程だけある美人だった。







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