EGOISTE
俺が歌南を好きになった理由。
美人なのは大前提だが、それ以上に良く笑い、良く怒り―――とにかく、くるくる回る表情を見ていて飽きないからだ。
分かりやすいし、ある意味素直。
俺は歌南のこんな顔を知らない。
まるで能面のようなつるりとした造りものの―――人形のような顔。
鬼頭は始終テンションが低く、いっつもこんな感じだが、それとはまた種類が違う。
未知の何かを見ているようで、俺はなんだか気味が悪かった。
どれだけそうやって見詰め合っていただろう。
俺たちが別れて…いや、別れる前でもこんな風に濃厚な視線を絡ませたことがない。
それは色っぽいものではなく、探るような相手の出方を窺っているような気持ちのいいものではなかった。
何度が強い風が吹き、やがて歌南が小さく吐息をついた。
すっと腕を前に伸ばす。
握った拳をゆっくり開いて、その中に光る何かがあった。
「これをね……指輪を捨てようと思ったの」
何で?
とは聞く必要がなかった。
答えが分かりきっていたから。
ただ浅はかだとは思った。
そうやって歌南は
何でも捨てられるのだ。簡単に―――