EGOISTE

「あら?この子は……」


水月の後ろにいる女が言った。


俺は何故か玄関に背を向けると、思わず口を覆った。


昨日の酔いが残っていたからじゃない、生理的な嫌悪感から吐きそうになった。


「姉さん、この子に何かしないでよ!彼女は僕の大切な人なんだから」


「大切な人?ってことは水月の彼女?やだぁ、それを早く言ってよね。


はじめまして。水月の姉で歌南(カナ)アベルです。よろしくね♪」





アベル……



そっか、2年前に向こうでアメリカ人と結婚したとか水月が言ってったっけな。



「鬼頭 雅です」


鬼頭は律儀に頭を下げたようだ。




「あら?」



女がどうやら背を向けてる俺に気がついたらしい。




「誠人!誠人じゃない?」







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