EGOISTE
俺は歌南から顔を逸らすと、ふんと鼻をならした。
「あんなのとっくになくなった。これは気に入ってるからリピートしてるだけだ」
「可愛げないわねぇ。昔とちっとも変わらない」
歌南はちょっとむくれた。
ホントに…、何でだろう。
この女に貰った香水なんて使う気にもならなかったのに、何故かリピートしてまでこの香りにこだわっていたのは。
「いい男になったわね」
歌南は笑みを浮かべる。
ころころと表情が変わるところも昔と変わっていない。
「あのぅ。先生とお姉さんってお知り合いなんですか?」
鬼頭がボストンバッグを運びながら、遠慮がちに聞いてきた。
「あらあ、ごめんなさいね。運ばせちゃって」
歌南は鬼頭からバッグを受け取ると、床にどさりと乱暴に置いた。
「付き合ってたのよ。昔ね」
もし、過去が消せるのなら、その事実を消したい。