ワンダフルエラー



「チューしていい?」

「…げほっ、ごほっ」


思わず咳き込む。わたしの背中をさすりながら、大丈夫か?なんて聞いてきた。

いや、おまえが大丈夫かって感じなんですけど…。

上がってきた熱と突拍子も無い十夜の言葉に、頭がくらくらする。


「折角お見舞いに来てもらってこんなこと言うのもあれだけど…、殴るよ?」


言えば、十夜は不服そうに口を尖らした。


「なんでだよ、サラだって俺の唇奪ったじゃん」

「気色悪い言い方すんな!」


十夜の言葉に、ふと記憶を遡らせる。

ああ、あの時か。状況がぼんやりと思い出される。


月夜の下の十夜があまりに綺麗だったから、軽く唇を攫ってやったのだ。


「うん、だってあれは十夜が凄く綺麗だったんだもん。チューくらいしとかないと勿体無いかと思って」


にへら、と笑うと十夜は呆れたようにわたしを見て、言う。


「じゃあ、俺も一緒。今のサラ、すごい色っぽいもん」


サラリとそう言う十夜を思わず、ぽこっと叩いた。
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