導く月と花に誓う



待て、と言ったものの、その先に、え…と、と言葉につまる。




「…別に、あたしは姿なんて、気にしない…。

助けてくれた人を恐がるほど、
あたしはそこまで要領よくないし。



あの時、あそこに狐燈がいなかったらあたしは、きっと悔しいだけで終わってた…


何も言えなくて、後悔だけがずっと残ってたと思う。



だから…その、…いろいろとありがとう」





そう言ってから、うつむいた。


うつむき加減で言ったので彼の表情は見えない。



だけど、ふわ、とあたしに影がかぶさったのはわかった。



ふいに視線をあげると、その先には跪いている彼の姿があった。




「そのようなお言葉、私には勿体ない。

言いましたでしょう。
私がどれほど、貴方の力になりたいと思ったか…」



そう言って、彼は優しく微笑んで。



「お礼を言わなければならないのは、
…私の方です。

あの時、こんな私を救って下さり、
ありがとうございました」




ですから、と彼は続ける。











< 21 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop