【完】甘い恋よりもそばにいて
★第三章★



はじめから予告したキスをするのが
こんなにも難しいなんて思わなかった。


タイミングとか全然わからない。

先輩の顔は常に
あたしの右どなり1センチ横にあって

安らかな息づかいは
あたしの頬を静かになでる。


あー、いくら考えてもわかんないよ。



もうお手上げ…


「もう、降参なわけ?強気な莉華さんは」


やっぱりそうやって言われると

あたしの闘争心に火はついて小さな勇気を振り絞って行動に出た。






チュッーー




不意打ちのキス。
だけど、軽く唇を合わせるこんなキス…。


先輩にとっては、それなりのキスの真似ごとで、


先輩を振り回すことなんて…


出来な…い…。





瞳にうつる先輩は

頬を赤く染めていく。




え?


ウソ…


先輩、真っ赤だよ。


余裕笑みは…崩れた。
恥ずかしがった柔らかな表情。


「あぁ、クソッ!あんま見んな…」


「あ…ぇ…と…」


驚きで声も出なかったのに、
あたしの口をついて出てくるのは、
先輩の受け売り。




「先輩、その顔…可愛い過ぎますよ」

素直な気持ちだけど、
先輩にとってはかなりの嫌味なのだろう…。


「うるせぇよ。つーかうぜぇ」










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