利己的ヒーロー
犬歯(剣士)
[炭鉱のある町/裏道]


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寂れたバーの後ろ、さらに寂しい裏通り。

アスファルトと無機質な壁に囲まれた灰色の世界に、赤が一つ。

否、一人。

長身に、筋肉質な身体。
硬く閉ざされた口元と褐色の瞳は馴れ合いを許さない。
背には男の八分程もある、大きく武骨な剣を背負っている。

しかし、なにより印象的なのは、その赤――――深紅の髪だ。
炎を固めたような、爆ぜた髪。
一度見たら忘れられない程に、焼きつく色。

その赤毛の男の行く先に、5人の男が立ちふさがっていた。

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