永遠の翼
「でも・・・すごいですよね。月島さんは」


「・・・そうか?」


あまり素直には喜べなかった。


「そうですよ。全国からピアニスト志望が集まるコンクールの金賞を取ったんですから、胸を張っていいと思いますよ」


「・・・・・・」


確かにそうなんだろう。でも。


所詮俺は、父さんの『影』なんだ―――。


・・・いや、考えるのは止めよう。


音羽はヘンな奴だが、話していると楽しい。


こんなときに、嫌なことを考えたくない。


「そういえば音羽。俺の傘はどうした?」


気分を変えるために話題を変える。


「まさかここの生徒だとは思いませんでしたから、持ってきてませんよ」


今思うと、なんでコイツに声をかけたのか、自分でも分からない。


―――けど、なんとなくほっとけなかった。


ただそれだけだ。


「じゃあ、明日持ってきてくれないか?」


「構いませんけど・・・いつ渡せばいいんですか?」


「そうだな・・・明日の昼休みにでもどうだ?」


「いいですよ」


「・・・さてと」


「帰るんですか?」


「ああ。充分リラックスできたしな。お前はまだここにいるのか?」


「もうちょっとだけ、ここにいます」


「そうか・・・じゃあな。帰るときは気をつけろよ」


「はいっ。ありがとうございます」


そうして、俺たちは別れた。



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