パステルカラーの恋模様

―…


あたし達の視線の先には、間違いなく写真の彼女が立っていた。

騒がしいはずなのに、一瞬、そこだけ周りから切り取られたみたいになった。


そして、彼女が啓太に気づき、ぱあっと笑って、沈黙を破った。


「啓っ!!」



“啓”。

鮫島と同じ呼び方。


きっと、中学時代のあだ名なんだろう。

親しみがこもった呼び方……。



元カノ、愛美さんは、写真よりももっと綺麗になっていた。

胸元まである髪が、ふわふわと巻かれていた。



愛美さんは、戸惑ったような、嬉しいような、気まずいような、そんな表情で啓太の事を見た。



啓太はただその場に立ち尽くして、何も言わなかった。

愛美さんは、一緒にいた友達に一言言い、こっちに近づいてきた。



前にいた鮫島にも、「久しぶり!」と笑う彼女。

鮫島は、「お、おう…」と小さく呟き、またこっちを見た。




そして、愛美さんはついに、啓太の目の前に来てしまった。



やだ、そんな近づかないでよ。




悪い方へ、予想なんかしなきゃよかった。

あたしの予想は現実のものとなってしまった。
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