パステルカラーの恋模様
白い肌に伝う、一筋の涙。
足の力が抜ける。
水は、流れ続ける。
あたしは、色を失ったみたいに、何も見えなくなった。
やっとのことで、あたしは水を止めた。
そして、ちゃんと啓太の顔を見ないままに、コートを羽織った。
帰ろう。
今、ここにあたしがいたらいけないような気がする。
誰だって、一人にしてほしい時くらいある。
でも、やっぱり哀しいな。
今、啓ちゃんの心の中には、あの人しかいないんだろう。
今も、好きなの?
ねぇ、啓ちゃん………。
鞄を持ち、帰り間際、もう一度啓太を見ると、まだあの場所で、小さく俯いていた。
あたしは部屋を出て、ドアの鍵を閉めた。
締めてから、その鍵を見つめた。
『可愛いっしょ。俺が描いたんだよ』
ああ、啓ちゃん。
今日は、星がきれいだよ。
この鍵みたいに、晴れてたんだね。
あたしはドアの前にしゃがみ込んで、声を殺して泣いた。