パステルカラーの恋模様

「うしっ、分かった!」

「え?」


鮫島は腕を組みなおして、あたしの方を見た。



「啓と桃井の話、聞かせてやる」

「……聞きたくない」



あたしが唸ると、鮫島は、そこらへんにあったピコピコハンマーで「えいっ」とあたしの頭を軽く叩いて、「じゃあ、独り言」とため息をついた。




「桃井は、女子にも男子にも人気がある奴だった。結構サバサバした性格だったんだ。啓とは、中三の初めに付き合いだして、すごい仲良かったんだよ。何ていうか、桃井が啓をリードして可愛がってた、みたいな」



あたしは妙に納得して、話に耳を傾けた。



「で、な?受験のシーズンになると、皆ピリピリすんじゃん。で、桃井の奴、第一志望失敗してさ、かなり凹んでたみたいで。もう高校行かないとまで言い出して」


「荒れてたんだ」



「ん。で、その頃からちょっと桃井が荒れ出したのを、啓は心配してた。どんなに思い通りにいかなくても、全うな道を歩むべきだって。第一志望じゃなくても、ちゃんと試験受けて、高校生になってほしいって、応援してたんだ。真面目な奴だから、あいつ」





啓ちゃん…。

何だか鼻がツンとした。



鮫島は、不自然に笑う。
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