パステルカラーの恋模様
「美園ちゃん?」

「…あっ、はい!」


「人を好きになる時に、理由なんていらないのよね。ちょっとノロケちゃうけど…私とお父さんもそうだったのよ。

最初は大嫌いだったし、デリカシーはないしね。ほんっとにもう、いちいち勘に触る人だったの。

でも、いつのまにか…一緒にいないとしっくりこないって思うくらいになってね。かけがえのない存在になってたわ。ああ、これが好きって気持ちなんだな、なんて」




「やだ、もう語っちゃった!」と笑いながら、啓太ママは大切な思い出をあたしに話して聞かせてくれた。


人を好きになる時に、理由なんていらない、か。


あたしは…どうなんだろう?

啓太の事、どう思ってんのかなぁ。

何かに気づけそうなのに、思考が遠回りする。



あたしは気がついたら、唇を舐めていた。

舐めては乾き、乾くと舐める。


ちらっと啓太を見ると、あたしの事を見ていた。

とっさに目を逸らす。


ヤバイ、余裕ないのバレちゃう…。



すると啓太ママが、勢いよく立ち上がった。あたしは、びっくりして見上げた。



「よし!じゃあ、美園ちゃん!今日は、家でご飯食べていかない?」

「へ?」

「一緒に作ろうっ。女の子同士」


すると啓太が横から、「“女の子”同士…?」と突っ込み、変な顔をした。


「そこ!突っ込まない!」と啓太ママが指を指した。


あたしは何だか可笑しくて笑った。そしたら、二人もつられて笑った。



「何か娘ができたみたいで嬉しいな。ねえ、啓ちゃん、何が食べたい?」


啓太ママが弾んだ声で聞くと、啓太はあたしを見た。

ドキ。



そして笑って「肉じゃがが食べたい」と言った。


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