パステルカラーの恋模様
あたしは啓太の後姿を見送った。



あ、今、あそこの女の子達、啓太の事見てた。


『ねぇねぇ、あの人』『ねっ、すごいかっこいい!』『声かける?』



あたしはしゃがんで、ひざの上にひじをつき、頬杖をついて、勝手に、女の子達の口の動きをアフレコした。


ねぇ、啓ちゃんさぁ、やっぱりすごいモテるね。

あたしは、何だか複雑。



ちょっと思ったんだけど、あたしと啓太の関係を一言で言うと、何だろう?



友達以上、恋人未満とか、片想いのクラスメートとか、朝同じ車両で会う他校の子とか、そういう普通のじゃないんだもんな。



こんなに一緒にいても、本当のカノジョじゃないんだし。

あたしの語彙力じゃ、とてもじゃないけど表現できない。



昨日、啓太の友人君、鮫島隼人がぽろっとこぼした、元カノ疑惑。

いや、疑惑じゃない。



啓太に前、本当に大好きだった女の子がいたって事は、確かみたいだ。

だけどその事は曖昧なまま、あたしの妄想だけが広がっていく。



彼女には、もっと可愛い笑顔を見せるのかな。



もっと自分の事、色々話したり、甘えたりするのかな。



とにかく、あたしは、何かくやしい。


元カノに対して、そして何より、自分の気持ちがはっきりと分らないという事に。



遅いなぁ…。

すごい行列なのかな。


あたしは指をいじったり、ケータイを見たりして時間をつぶしていた。



下を向いて携帯をいじっていると、そこがいきなり影になった。


何?
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