PRINCESS STEP



「プリンセスになるんだ。俺のね」


その言葉にあたしは呆然と立ち尽くす。


この人の頭は大丈夫なのだろうか…。この際プリンセスとか、俺の、とかは置いておこう。



何より心配なのは、この男の頭だ。




「何言ってんだお前…。病院、ちゃんと行ったほうがいいぞ?」


変な男に捕まったあたしは、もっと危険だ。


あたしは後ずさり、優を見上げる。


「…逃げないでよ、地味に傷付くよ?」


優は苦笑いを浮かべた。


「俺は、天王寺財閥の御曹司なんだけど……」

「御曹司だぁ!?」


ただモンじゃ無いとは思ったけど………金持ちのボンボンかよ!!



「先日、現天王寺財閥の社長で、俺の父なんだけど、その父から、将来のパートナーを見つけるように言われたんだ」



ふむふむ、それで??


「女性は、星の数ほどいるけれど、運命を感じる女性には出会えていなくてね、ついに父から、無理やりお見合いをさせられそうになっていたんだけど…」


優はそう言って、まるで恋人に触れるかのようにあたしの頬を撫でた。


「っ!!」


驚いて離れようとすると、優はあたしの腰を引き寄せ、距離を縮める。



「やっと今日、俺は運命を見つけた」

「は??運命??」


その真剣な瞳に、心臓がドクンッと跳ねた。


運命とかなんとか、知らないけど、早く離れてほしい。心臓が、さっきから煩くて敵わない。


「俺の運命のプリンセス、君は磨けばどんな社交界の花達よりも美しくなる」


「意味が分からない。第一、なんであたしなんだよ」


あたしの言葉に、優は不敵に笑った。












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