約束のノート
「・・・あなたは、どうして遥のためにここまでやったんですか?」


学芸会の演目を変えてまで。


他の教師から反対の声もあがっただろう。


そこまでして、遥を助けた理由を知りたかった。


「俺は、ひとりでも多くの生徒の笑顔を見たい、と思って行動している」


「・・・・・・」


「教師が生徒を助けるのは当たり前だ。違うか?」


誇らしげに、一片の迷いもなく。


ヒゲ先生は答えた。


―――ああ。


―――こんなことを、平然と言える教師がいるなんて。


―――カッコイイな・・・


普段の行動からは、想像も出来ないくらいに。


「・・・いいえ」


そして、このひとは。


俺の担任なんだ。


そう思うと、すごく誇らしかった。


「色々と、ありがとうございました」


「やったのはお前たちだ。俺はその背中を押しただけに過ぎん」


「・・・はい」


俺は胸を張った。


・・・俺がこの人とふたりきりで話をしたのは、これが最初で最後だった。


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