じゃんけん
梨香との帰り道
あれから一週間程経ち、みんながクラスに慣れてきて、野田にも友達が何人かできたようだ。

私は休み時間、野田が友達とお喋りしているのをボーっと見ていた。

「ゆーぅた!」

梨香だ。

「何見てんの?」

「い、いや、オレ昨日の練習でさ、カーブをよく打たれたろ?
オレの投げ方に癖でもあるのかなって考えてたんだ。」

私は野球部に入部した事を親には言っていないが"バレている"だろう。

毎日のように練習着を洗濯機に突っ込んでいるから…

「優太、今日からテスト前で部活休みだよね。
一緒に帰ろうよ!」

「…ああ。」

帰りのホームルームが終わり、梨香と教室を出ようとした。

野田とは"あれ以来"一言も言葉を交わしていない。

「優太!早く行こーよ!」

「今行く。」

野田の事が気になりながらも、教室を出た。

「優太と一緒に帰るの久しぶりだね。」

、と同時に梨香が私に腕を絡ませようとしてきたが、私は軽くかわした。

いつものパターンだ。

梨香がほっぺを

"プクッ"

と膨らませながら、カバンの中をゴソゴソと何かを探している。

これも、"いつものパターンだ。"

「じゃーん!
優太、これなぁーんだ?」
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