じゃんけん
どんどんと野次馬が集まってくる。

私が"本気"で投げれば
150km近くは出るだろう。

この学校には私の本気の球を取れる人はいない。

だから一度も本気で投げた事はない。

今が初めて本気で投げる。

…ので、

"よろしく" 寺崎君…

人が

"本気で怒った"

時は頭がとても冷静になるものだ。

集中していると言っても良い。



「……ど、どこねらってやがる!?」

寺崎君が何とも
"カッコの良い"
姿で、震えた声で叫んだ。

さすが"元エース"、

顔面直撃かわすとは…

「わざとです…」

私は寺崎君に"ちゃんと"聞こえる小さな声でつぶやいた。

「な、何!」

私は"カッコの良い"姿の寺崎君に近づいた。

「あ、今怒ってます?
何ならお父さん連れてきてもいいですよ。」

あーめんどくせー…

何だか急に"野田"に
会いたくなった。

この日を境に私にとって、"野球"はどうでもよくなってきた。

と言うか、私の中の

"何か"

が私を強く引きつける。
それは何なのかは分からない。

その"何か"に比べ、野球は私にとって、魅力を感じさせなくなってきたのだ。

練習試合は勝ったか負けたかは覚えていない。

でも健二と梨香のアホほど喜んでいた姿は覚えているので、多分、勝ったのだろう。
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