じゃんけん
野田が顔を上げ、口を開いた。

「今日は一人で来たの。
最近じゃんけんと散歩していると、引っ張られてよく転んじゃうから。」

"じゃんけん"は

小さなダックスフンド

で、人を引っ張る力など、たかが知れている。

…よく見ると野田は

"あの日"

と比べて間違いなく痩せている。

体調が良くないのは間違いない…

「そっちは?」

「え?」

「さっき、何か言おーとしたじゃん。」

野田は思い出す仕草をしたが、すぐにそれが
"わざと"だと分かった。

「この前、ありがとう…」

「え?」

何のこと?

「この前、部活で私の為に先輩に、あんな事したんでしょ…」

何で知ってんの…?

まぁ、あれだけ"大騒ぎ"になれば、みんな知ってるか…

「別に、お前の為にしたわけじゃねーよ。
寺崎の奴には前からムカついてたからさ。
金持ってりゃ誰も逆らわないと思ってたら大間違いだっつーの。」

……
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