借金取りに捕らわれて
「あぁ~大したことじゃない。」



忘れてた。そういえばさっき切られたな…



すると女は慌てた様子で鞄の中からハンカチを取り出し、俺の手を取り傷に巻き付けた。



「深い傷じゃないかもしれませんけど、化膿しないように早く手当した方がいいですよ。」



俺は正直驚いた。



何故初対面の相手にこんなに優しく出来るのか…



しかも、今の俺は紫色のシャツに黒のスーツでこれから出社する会社員には到底見えない。


こんな格好でケガしてるような男なら尚更関わりたくないと思わないか?




「すまない…綺麗なハンカチだったのに汚してしまったな…」


「気にしないで下さい。ハンカチならもう一枚もってますから。」



俺はそう言った女の微笑みに…

胸がざわめくのを感じた…



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