借金取りに捕らわれて
借金取りに捕らわれて
「大丈夫か?」


「はい、もう大丈夫です。」



目を覚ますといつ乗ったのか車の中で、その時にはもう酔いも覚めていた。


秋庭さんからもらったペットボトルのミネラルウォーターを飲みながら、チラッと気付かれないように隣に視線を向ける。


武寅さんに抱き付いたことを色々言われるかと思っていたけど、何も言われないのはお酒のせいだと分かってくれているからなんだろう。

怒られるかと思ったけど…




車の後部座席に座る秋庭さんはいたって普通に見えた。








暫くしてアパートの前に車が止まった。


「あの、今日はありがとうございました。」


「気にするな。お礼をしてもらっただけだ。」


本当…秋庭さんって優しい人だな…
そんな風に言うけど、私に気を使わせないようにしてくれたのは分かる。


「秋庭さん、少し待っててもらえますか?渡したいものがあるんです。」



昼間真吾が持ってきた四百万を渡したかったのだ。
こういうのは早く渡した方が良いと思うし、何より早く借金取りと負債者の関係を解消したかった。


マサさんがドアを開けてくれて降りると、心配だから一緒に行くと秋庭さんも車を降りた。


「本当もう大丈夫ですよ。」


呂律も回るし、足もふらふらじゃないし、完全に酔いからは覚めている。
秋庭さんは以外と過保護だな。



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