sweet×sweetな恋モヨウ



「えーと…」


いつの間にか取り囲まれてしまった俺は、ユキちゃんに“助けて”の視線を送った。


「ホラホラ、みんな。まだ“ツアー”は終わってないから。」


それに気づいたユキちゃんは、“悪い!”と口パクで謝ってから、女の子たちを引き剥がしにかかった。


「次は、絵馬だよね?あっちに売ってるから…」


ユキちゃんの言葉に、女の子たちの目が輝く。

これは、やっぱりアレだ。ユキちゃんの副業…じゃなくて“ボランティア”。

“縁結びの神様”を奉る神社の息子であるユキちゃんは、“恋愛の神様”として有名なんだ。


まとめ上げたカップルは数知れず。

ユキちゃんに相談すれば恋が成就する。

そんな噂のせいで、特に女の子から絶大な支持を受けていて……

月に何回か、こうして“恋愛ツアー”と称して、神社を案内している。


完全“無料”だけど、神社のPRになるわけで…親からの小遣いが弾むらしい。


「ハジメくん?」


絵馬目指して走って行く女の子たちを見送っていると、ふいに服の裾を引っ張られた。

振り返れば……


「アヤカちゃん?」


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