あの頃から君は
 男はTシャツとジーンズにパーカーを羽織っただけのシンプルな服装さえ様になる体つきで、顔立ちも整っているせいで周りからの視線を集めていて、美羽は落ち着かなかった。

「まあまあ、気にすんなって」

 そう言って笑った男は、中学時代の同級生。親が大の新撰組ファンだったせいで総司と名付けられた可哀想な人物だ。それをネタにからかわれているのを美羽は何度も見た。けれども、芸能人の名前を付けられるよりは増しだと笑うだけで、総司は相手にしなかった。その時に、こいつは名前の通りの強い男なのかもしれないと思ったものだ。

(私なら、どちらも嫌だな)

 歴史に名を残すような人物の名前を付けられたら、名前負けして自分に自信が持てなくなりそうだ。(もし、小町なんて名前付けられたら、一生親を恨むだろう。)親の好きな芸能人の名前なんて、それこそ恥ずかしいだけだ。
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