。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
戒は唇を結んで、目をゆっくりとまばたきさせている。
何も言わずあたしをじっと見下ろしていた。
「…な、何とか言えよ!!」
あたしが真っ赤になって怒鳴ると、一足遅れて戒が顔を赤くした。
「や!びっくりして!!」
ちょっと待て…と言い置いて、戒はくるりとあたしに背を向けた。
「夢……?じゃねぇよな」なんてぶつぶつ独り言が聞こえる。
あたしは近くにあった枕を掴むと、戒の頭頂部めがけて思い切り投げつけてやった。
さすが虎間。
後ろ向きなのに枕をあっさりと避けると、うまく手でキャッチした。
「何しやがる!」
戒が眉間に皺を寄せあたしを睨んだが、あたしはふっと笑った。
「これで夢じゃねぇって証明できたろ?」
あたしの言葉に戒はちょっと苦笑い。
「お前らしいな」
「だろ?」
あたしも笑い返した。
戒が居れば平気。
どんな辛いことでも笑い飛ばせる。
どんな哀しいことも笑顔で消せる。
だから
「よろしくな」
あたしはにっこり笑って戒に手を差し伸べた。