。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。

ホストクラブ!?



「改めてご挨拶いたします。虎間 道惨の家内で鈴音(スズネ)と申します」


ソファセットに四人落ち着いて、それぞれ飲み物が出された頃合を見計らい、姐さんが妙にかしこまって挨拶して頭を下げた。


きれいな手をきっちりテーブルに揃え、ゆっくりと頭を下げるその姿は―――まるでマナー教室の先生のように優雅で上品だった。


しかも…鈴音さん―――名前もきれい。


きれいに手をついて挨拶する姐さんに、あたしも慌てて頭を下げた。


「龍崎はんとは顔見知りやけど、朔羅ちゃんとお会いするのは初めてやし、うちのこと知ってもらいたいわぁ」


姐さんは叔父貴をちらりと見ると、にっこりと微笑みを浮かべた。


「どうぞ」と叔父貴が無言で手を差し伸べる。


くぅっ!叔父貴……


久しく見てなかったけど、やっぱカッコいい!!!



「うちな、京都の祇園で芸妓をしとったんどす。虎間は常連はんで、京のとある料亭で見初められたんどすえ」


へぇえ。どうりで、上品な物腰とか、戒とはちょっと違ったイントネーションを持つ独特の話し方が妙に納得いく。


「素敵な出逢いですね」


まるで運命の出会いみたい…あたしはうっとりと表情をゆるませた。


しかも…姐さんは今でもこんなに美人なんだし!きれいな着物着てお上品な踊り舞って、想像しただけでもうっとり。


隣でふてくされたように深く背中をソファに預けていた戒が、あたしの袖をちょっと引っ張った。


「そないなロマンチックなもんじゃないで」


呆れ返ったように、ちょっと耳打ちする。


へ?どういう意味…?


戒の言う通り、姐さんはちょっと忌々しそうに表情を歪めると、頬に手をついて吐息をついた。


「あの人、毎日毎日置屋(芸妓や舞妓を抱えている家のこと)に来て、長ドス振り回して、『結婚してくれなんだら死ぬ』言うて、そりゃしつこかったんえ」






< 459 / 558 >

この作品をシェア

pagetop