。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
逃走!?
夜23:00――
廊下はしんと静まり返っている。
その廊下に足音が響いた。コツンコツン…乱れのない、一定のリズム。
足音は迷わずこの病室の前まで来て止まった。
ガチャガチャと鍵を鍵穴に差して、開錠する音が聞こえる。
思った通り。鍵は病院が管理してるから、施錠しても意味がないと分かっていた。
扉を閉めると、何者かはきっちり鍵を閉めた。
ゴクリ…とあたしは唾を飲み込む。
背の高い男だった。視界の端に白衣の裾が見える。暗い室内にその白さは異様なほど鮮明に浮かび上がっている。
男はポケットから何かを取り出した。
先が怪しく光る何かを握り、戒の寝ている布団めがけて振りかざした。
「さようなら。虎間」
ぞくり、とするような低い声。
「残念。虎間じゃない」
布団がバッとめくられ、キョウスケが姿を現した。
男が一瞬たじろいだのを確認すると、両脇からあたしと戒が男めがけて突進した。
「てめぇ!何もんだ!」
あたしは怒鳴り声を上げ、男の右腕を。
「観念しやがれ!」
左側から戒が男の左腕をそれぞれ、羽交い絞めにする。
驚いた男は、それでも冷静に左肘で戒の腹に一撃を喰らわした。
「ってー……!」
「戒!!」
この男は、戒がまだ本調子でないことを知っている。だから敢えて戒を狙ったんだ!