。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。
何かを言い出そうとしたけど結局お嬢は口を開くことなく、きゅっと唇を結ぶとそっと立ち上がった。
「邪魔して悪かったな。あたしも寝る」
「ええ、おやすみなさい」
小さく微笑すると、お嬢は顔をしかめて寝室に入っていった。
俺は寝室の扉がきちんと閉まるのを確認して、グラスをテーブルに置くと少しだけため息を吐いた。
今はまだ計画を悟られるわけにはいかない。
来たる日まで―――
真実を押し隠して。
天が二人を別つまで
事実を闇に葬って―――
―――――
……
その晩俺は夢を見た。
夢なんて久しぶりに見た。
視界が白一色で染め上げられていて、それがシーツの波だということに気づくまで少々の時間を要した。
クスクス…
小さな女の忍び笑いが聞こえて、俺はちょっと笑った。
柔らかい歌うようなアルト。
くすぐられるような、それでいてどこまでも心地良い声。
「翔―――」
彼女は―――百合香が俺の名をそっと囁いた。