lucky×unlucky

それは簡単な理由



-篠宮杏side-

「…はぁっ…はぁっ……はぁ」

廊下を出てすぐの曲がり角を曲がり、さっきの教室から死角になる階段の後ろへ身を隠す

チラリとそこから顔だけ覗かせると幸いにも後ろから追って来る様子はなく、私は上がる息をゆっくりと落ち着けていった


こういう呼び出しは何度かあったが全て無視してきた

こんな奴らに構っているくらいなら勉強した方がマシだと思っていたから

そのツケが今頃回ってきたのかと思うと自嘲気味に笑ってしまう


"あの二人から離れなさいよ‼"

「……ッ」

ギャルの一人から言われた言葉を思い出し、胸がツキンと痛む

どうして痛んだのかは分からない

もし、あのしつこくて五月蝿い二人から離れられたらどんなに嬉しいことか

そう思っている筈なのにモヤモヤとした灰色の雲が心の中を埋め尽くしていく

上手く表現できないこの感情に多少なりとも驚きと動揺を隠せない


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