姉妹

そう、二人は両親を知らない



なんせ物心ついたときにはすでにいなくなっていたのだから



姉妹が中学二年生になるころまでには手紙だけはたまに届いていたらしい



しかし今となっては両親はどこにいるのか、何をしているのか、生死さえもはや善蔵さんは知らないという





この物語から美紅の中にある何らかの闇を俺はすべて理解できたとは思わない



しかしその壮絶な幼少期から思春期をかけて、頼れる親のいない美紅は何を思い、何を感じてきたのだろうか



もしかしたら思うことさえやめてしまったかもしれない



両親の残像さえ残らない青春時代




「物心ついてから別れる方が傷になるから、両親の記憶がないのは不幸中の幸いだ」という人がいるかもしれない


でも俺は思う


最低の親だったなら憎むことができる
最高の親だったなら愛おしむことができる


しかし美紅はそれさえ出来ない


記憶が一切ないということは、憎むことも、愛おしむことも出来ないということだ


「自分」が分からないということにもなる



…これの一体なにが幸いだというのだろう?




俺は善蔵さんの話を聞いて、そんな感想を持った
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