姉妹
「「いってきまーす!」」


美月と美紅の明るい声が玄関に響き渡った。

「いってらっしゃい」

祖父はにっこりと微笑んだ。

きゃっきゃっとはしゃぎながら登校する姉妹の後ろ姿を見て、祖父はほっとため息をついた。

コーヒーの香りが漂い、日差しの柔らかい朝だった。

今日も平和だ・・・


そんなことを思いながら



七年前のことは誰にも言っていない。

しかし誰にもばれていないとも思っていない。

確かにあの庭には美月がいた。目に涙を湛えていかにも心配そうに庭の影に呆然と突っ立っていた。

祖母はどうだろうか。確信は持てないが、あの騒ぎを少しは見ていたのではないかと思っている。

あの日からあからさまに美紅をさけているように思えてならないのだ。


「あらあら、美月ちゃんはもう出掛けたのかしら?」

ほら

「・・・あぁ、ついさっき姉妹そろって元気そうに行ってきますと言ったよ。」

「そう、美月ちゃんはいつも明るく元気そうでいいわ」

ほらほらほら


美紅については一切触れない。

誰もそのことは問い詰めない。美紅もなんとなく感じたのだろう。

こんな生活がもう七年も続いている。
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