姉妹
「やばいって!間に合わないよ!」
「四階とかきついよー」
「でも走らないと。美術の先生かなり怖いもん」
「先生遅刻とかありえないかな?ねぇ、ないかな?」

パタパタと少女たちがせわしなく廊下を小走りしていると、廊下の曲がり角付近から声が響いた

「ふざけんじゃねーよ。てめぇあたしの彼氏となにいちゃついてんだよ」
「そんなことしてない!」
「ならあの思わせぶりな態度は何なんだよ。へらへら笑ってんじゃねーよ」
「あなたの彼氏が誰か知らないけど、興味ないわ!」

「「「「?」」」」


「ねぇ、あれ…あのすごい怒ってる人って有栖川さんじゃない?」
「うわー怒られてる子、運悪いね」
「反論してるほうもかなり凄いけど。尊敬するわ」
「私、あの人苦手…」

 有栖川絵梨花 

この平和な中学の中では異例の存在だった
誰しもが恐れ、彼女の逆鱗に触れてはならないという暗黙の了解が存在するくらいだ
見た目はなんというわけではない普通の少女なのだが、不思議と周りを否応無く服従させる空気があった


四人は恐る恐る曲がり角から様子を伺った
いつもの理不尽なのだろうが、これは間違いなく修羅場だ
責められているのは誰なのだろう?
怖さ半分、興味半分
そんな軽い気持ちだった

「!」
「嘘…有栖川さんがまじギレしてるのってさ…」
「美月ちゃん…」

三人ははっとして美紅を見た
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