「キカイ」の子
通知表を配り終えた長谷川は、簡単に夏休みの注意をすると、生徒達を解散させた。






ざわつく教室の中、夏美が冬彦の方に歩いてきた。





「冬彦!一緒に帰ろ!」






夏美は付き合ってから、冬彦のことを名前で呼ぶようになっていた。






「うん、わかったよ。鍬原さ……夏美。」





名字で呼びかけた冬彦だったが、夏美の目が光ったので、言い直した。




「…いい加減慣れてよ~、冬彦。」




夏美が口を尖らせていった。




「ごめん。つい、いつもの癖で…」






冬彦がそう言って頭を掻いていると、透が後ろから茶化した。




「冬彦…尻にしかれるの早いな…」



「透っ!」




夏美がそう言って睨むと、透はそそくさと教室から出て行った。




「あれ?透は帰んないの?」



夏美が冬彦に不思議そうに訊いた。




「サッカー部の練習だって…」



「そうなんだ…」



「帰ろう。…夏美。」





冬彦は教室の入り口に立つと、振り返りながら夏美に言った。



「うんっ!」



夏美はとびっきりの笑顔でそう答えた。
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