「キカイ」の子
夏美は健一の部屋から出て来てから、ずっとふさいでいた。



「はぁ…海、行きたかったな…」



夏美がそう呟くと、

「じゃあ、いつ行こうか?」


と、冬彦が横から言った。




「え…?」




「健一さんは、夏美を連れていっても良い…そう言ってたじゃない。なら、行こうよ」




「でも、中に入れないなら…意味ないじゃん。」



「……たぶん、そこはなんとなかなるよ。」



「えっ?」



冬彦の意外な言葉を聞いて、夏美は上擦った声を出した。





「だって…健一さんがついてくるとは思えないもん。」




冬彦がそう言うと、夏美はニヤニヤして、

「そうか…それもそうだね。」


と、言った。









一方、健一は、二人がいなくなった後、机で作業をしながら、顔に穏やかな笑みを浮かべて、


「夏に海は必要でしょう。」


と、言っていた。
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