「キカイ」の子

健一が夏美の病室のドアを二、三回軽くノックした。




「……夏美ちゃん。入るよ？」








夏美はおそらく眠っているのだろう、中からの返事はなかった。







健一は冬彦に背を向けたまま、黙ってドアを開いた。







開けられたドアの隙間からは光が漏れず、暗い闇が、まるで冬彦達を吸い込もうと手招きしているようだった。








夏美はこんな闇の中でただじっと、最期の瞬間を待っている。







それに気づいた冬彦はいっそう強く夏美をここから連れ出したいと思った。







冬彦は中に入る時にドアを全開にした。











闇の中に廊下の光が、冬彦と共に入った。