「キカイ」の子
終わったはずの花火が、一つだけ、急に、打ち上げられたにも関わらず、夏美は毅然と冬彦を見つめていた。








「……今度は、聞こえたよね。」







驚いている冬彦から目を離し、夏美は夜空を見て、言った。








その言葉で冬彦は、我に返り、夏美が、今何を自分に言ったのかを理解した。








「鍬原……さん…」






「返事は、今じゃなくて良いから、決まったら、教えて…それじゃ。」


「あ…鍬原さ…」







夏美は終始うつむいたままで、そう言うと、元いた場所へ走って行った。








一人取り残された冬彦は、夏美の消えた林の方をずっと見ていた。









ひときわ強い風が吹き、周りの木々をざわざわと揺らした。
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