図書館>>>異世界



―――コンコン


『入れ』


あら、意外にしっかりとしたお声。
凛として、意志が強そうだ。

とか、実際、冷静に考えれたのはここまでだった。


だって、何せ王子っすよ?

処刑とかする権利を持ってる訳だよね?


座右の銘が『さわらぬ神に祟りなし』の私としては、最も避けたい人物。



「ほう。――噂の『賢者様』、か?」


私は王子の声に深々と礼をし、ゆっくりとフードを脱いで王子を見た。

眼を、あわせるように。



「お初お目にかかります。

しかし―――未だ私だとは…判りませんよ?
私には特別な能力など、ないのですから」



理不尽な環境の中で溜まった鬱憤を、言葉に込めて王子をしっかりと見た。

『未だ私だとは判らない』だなんて、私にしては優しい嫌味である。


でも、そうでしょう?

特別な能力も無ければ、変わった形の痣だって無い。

だからこそ、間違ったって事態もありうるんじゃないだろうかと思ったのだ。

そんな事になったらすごい腹立たしいけどね!……いや、賢者でも嫌だけどさ?

とにかく、何かムカつくから、ふふん!みたいな顔で王子を見た。
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