雪割草
 現実という残酷さを受け止めながら、シローは具有していたある行動を起こした。

 「取り敢えず、街へ行ってみよう!」

 四号バイパスから外れて゛野木゛という街の方へと、小走りでリヤカーを引っ張って行った。

 野木の街は人通りの少ない、閑散としている街だった。

シローは香奈を伴い、スーパーマーケットを探して歩いた。

否が応でも探して当てようとする心とは裏腹に、大きな建物は見あたらず、商店街の細い道筋に嵌ってしまった。

どうやら、この辺りにはスーパーは無いらしい……。

香奈が買い物袋を提げた通行人に訊いてみると、郊外まで足を延ばさなければならないとの事だった。

 二人は歩き続け豁然とした先に、ようやく野木で一番大きなスーパーマーケットに辿り着いた。

夕飯時の買い物客で、駐車場は満杯だった。

 シローは人目に突きにくい駐車場の端にリヤカーを停め、香奈の肩に手を置きこう言った。

「香奈ちゃん、お願いがある。

このスーパーのレジの近くに、客用の製氷機が在るはずだ。

そこから氷を貰って来てくれ。

多分、俺が行ったら怪しまれてしまうだろうから……。」

 肩を掴んだ手に力が入った。

香奈は小さく頷き、スーパーの入口へと駆け出して行った。

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