雪割草
第二十七章~四号線の幾何学
 「ねえ、おじさん!

これってジャンケンした意味あるのかな~」

 香奈は荷台の右側を押しながら言った。

「まあ、意味なんてあってないようなものだ。

あんまり気にするな!」

 荷台の左側を押しながら、上田は仏頂面の香奈を横目で見た。

どうやら、上田もシローの旅路に列したようだ。

シローはといえば、そんな二人のやり取りを聞きながら、少し微笑みをこぼしてリヤカーのハンドルを握っていた。

 三人は宇都宮を後にして、四号バイパスに出ると北へ向かってリヤカーを運んだ。

宇都宮を過ぎると、四号線は四車線から二車線へと道幅が狭くなり、景色も東京を出たばかりとは随分変わってきていた。

太陽が南側に昇る頃になると、三人は゛高根沢゛に着いた。

気温も穏やかで、過ごし易いお昼時ではあったが、その分美枝子の体を冷やす為の氷は、ただの水へと形を変えていった。

「シロー!氷がヤバいかもしれないよ!」

 香奈は荷台のブルーシートから滴り落ちる水滴を見ながら言った。

「うん、氷を貰いに行くか」

 シロー達は四号線を逸れて、高根沢の街へと向かった。

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